ダイビング事故はなぜ起こる?事故要因と対処法
ダイビング中、「ヒヤ・リハット」経験したことありませんか?
なぜダイビング事故は起こるのでしょう?
実は、ダイビング事故は国は違えど同じような要因で起きているんです。
初心者ダイバーの事故が目立つ一方、体調不良や過信によるベテランダイバーの事故比率も高いです。
事故発生時にバディ・システムが機能していなかったケースが70%以上占めます。
「安全管理はダイバー自身の自己責任」といわれますが、オペレーター側の不注意による事故も起きています。
事故原因の殆どがいわゆる「ヒューマンエラー」になるかと思います。
ここでは、先週参加した以下二つのPADIセミナーで得た、重要点をまとめました。
「安全ダイビング」に活かして下さい!
- PADIアジア・パシフィック:プロ向け「リスク・マネージメント・セミナー」: Australasian Diving Safety Foundation (ADSF)のCEO, Dr John Lippmann が行ったダイビング事故調査と分析(2001年~2013年にオーストラリアでおきた216人の死亡事故)をもとに、今後改善すべき点を検討
- PADIジャパン:一般&プロ向け「ヒヤリハット事故事例検証」:2018年~2021年の間にPADIジャパンに寄せられた事故例をもとに、一般ダイバーの方と一緒に事故分析結果と事故予防の具体敵対処法を検討
ダイビング事故例と年齢|40歳以上のダイバーは日々の健康管理が重要
国を問わず、明らかに40歳以上のダイバーの事故率が高い。
① オーストラリアのDr. Lipmannの調査によると、2001年~2013年の12年間でオーストラリアで起きたダイビング死亡事故(126人)の平均年齢は44歳。40代以上が全体の約70%占め、全体の79%が男性でした。
ここで彼が注目にしたのは、「ダイビング死亡事故と肥満の関係です」
死亡した126人中、77%がBMI指数(体重と身長から算出される肥満度を表す体格指数)が高く、37%はBMI指数で「肥満」を示してました。ちなみに、ニュージーランドでの調査結果も同じ関連性が見られているそうです。
② PADIジャパンの報告では、2018年~2021年の事故全体の80%が45歳以上だっととの事です。
③ 海上保安庁(PDF)が発表しているダイビング事故統計(2020年)でも、40歳以上が全体の72%を占めていました。
ダイビング事故例と経験本数|初心者は勿論、ベテランダイバーも油断は禁物
国を問わず、経験の浅いダイバーの事故が目立つ一方、ベテランダイバーの事故も起きています。
① オーストラリアのケースを見ると、2001年~2013年に起きた死亡事故126人中、
- 30本以下:41%
- 30本~200本:34%
- 200本以上:12%
残念なのは、30本以下のダイバーのうち、初めてのダイビングで死亡したケースが9件、5本以内が15件あったこと。
ダイバーのスキル不足と、引率側(インストラクター)の注意不足が要因です。
ベテランダイバーの死亡原因で多かったのは健康問題と過信。
② PADIジャパンのセミナーーでは詳しい数字は発表していませんでしが、
45歳以上の事故例が多いという事は、ある程度の経験者だと想像できます。
③ 海上保安庁が発表している、過去5年間の事故者222人中、50本以下が31%に対し、100本以上が30%
- 初めて~10本未満:31%
- 10~50本:18%
- 50~100本:8%
- 100~500本:16%
- 500本以上:14%
ダイビング事故(死亡)に至った要因|体調チェックの重要性
① オーストラリアの場合、死亡者126人のうち47%が健康状態に何らかの徴候があり、37%はそれが死に至らしたようです。
死亡要因で多かったのが、①虚血性心疾患:きょけつせい-しんしっかん:25% ②呼吸器系の問題:6%
心臓の問題で死亡したダイバーのほとんどが原因不明とされ、「浸水性肺水腫」のケースも挙げられてます。
残念なのが、死亡者の11%は過去12か月に医師から診断を受けていたそうです。
Dr. Lippmann いわく、最も重要なのは、ダイビングに詳しい医師から診断を受けること。
そして、ダイビング・オペレーターは「メディカル・チェック・フォーム」をいい加減に扱ってはいけないと強調。
日本では、DANジャパンのDD NET(ダイバーズ・ドクター・ネットワーク)からダイビングに詳しい医師を探すことができます
② PADIジャパンによると、2018年~2021年に起きたダイビング事故の70%が「体調不良に関連するトラブル」
特に40代以上のダイバーで目立つのが「浸水性肺水腫」という病気。
※覚えてますか? 水中で体調が悪くなった時に使うハンドシグナル
ダイビング前の体調チェック(PDF)は勿論、エントリー直前、直後に心拍/呼吸の乱れはない? ダイビング中に体調不良(息苦しさ)はないか? 意識し、問題があったら、バディや引率者にサインを出してくださいね。
「浸水性肺水腫」の場合は、ダイビング前に自覚症状がなくても、水に入って少し泳いだだけで「息切れ」、「呼吸のしずらさ」などの症状がでます。
※体調が悪いと思ったら、周りに流されず、ダイビングを中止する勇気も必要です。
※PADIダイビング関連書式:ダイバーメディカル(病歴/診断書)/安全潜水実施了解声明書
何が引き金で事故は起こる?
オーストラリアでのケースを見ると、事故原因の引き金となった一位は水中環境
- 水中環境 : 54%
(流れ、視界不良、荒れた海、サージ、深度)
- 疲れ: 18%
(ダイビング前、最中、後の疲れ、長い水面移動など)
- タンク内のガス問題: 12%
Dr. Lippmann いわく、水中環境と経験の浅いダイバーの死亡事故の関連性は高く、ダイビング・オペレーター/インストラクター側にも問題があると指摘。また、ベテランダイバーの場合は、ブランクがあるにも関わらず、過信して行き成りダイビングを行ってしまたケースがあるとの事。
オーストラリアで起きたダイビング死亡事故全体(126人)のうち、13%はダイビングのトレーニング中やいわゆる体験ダイビングの最中に起きています。16人中6人は健康問題があったそうです。
- ダイビングオペレーター側は必ず参加者のメディカルチェックをきちんと確認
- コンディションが良くない海でコースや体験ダイビングを行う場合は、必ず人数比を考慮し、アシスタントの数を増やす
- ダイビング本数に関わらず、ブランクがある場合は過信せず、リフレッシュコースに参加するか、やり始めは穏やかな海でダイビングを行う
事故発生時の状況|バディシステムは機能していたのか?
① オーストラリアのケースでは、ダイビング事故で死亡した126人中72%のダイバーがバディと離れた場所で死亡してます。
- 10%は初めからソロダイブ(一人でダイビングをする事を計画)
- 44%はダイビング中にバディやグループとはぐれてしまった
- 17%は事故の直前にバディと離れてしまった
ダイビング事故で死亡した126人中、82%が発見時にウエイトベルトを着用していたことです。
② PADIジャパンの統計でも、事故発生時にバディシステムが機能していなかったケースが80%を占めました。
バディ・システムの重要性は当ブログでも幾度も触れていますが、
『もし、トラブルが起きた時、近くにバディがいてくれたら』と思うと、本当に悲しい気持ちになります。
バディ・システムとは、初めから最後までバディと呼ばれるバートナーと一緒に助け合いながらダイビングを行う事です。
- 必ずバディチェックをおこない、お互いの器材チェックのみならず、体調や心理面を含めて確認した方がいいですね。
- 初めから最後までバディの近くでダイビング
- 水中で体調が悪くなったら、直ぐにバディに伝え一緒に安全な浮上
- 水面に出た時に素早く確保出来る事が大切! 直ぐにBCDに空気を入れ浮力確保しましょう!
- 必要であれば、浮力確保の為にウエイトを外す(エマージェンシー・ウエイト・ドロップ)
ダイビング事故の対処法とまとめ
海上保安庁(PDF)の報告によると、2020年におきたダイビング事故者は41人。これは、マリンスポーツ全体の約5.1%。
ダイビング事故はマリンスポーツ全体でかなり少ないんです。ですが、事故が起きている事も事実。
ダイビング事故を起こさない為にダイバーがやるべきこと
- 体調管理:健康な体を維持(特に40代以上のダイバー)
- 健康に不安のある方は必ずダイビングに詳しい医師からの診断を得る
- バディシステムのもとでダイビングを行う
- 意識してダイビングスキルの向上を心がける
- 自身の健康状態やスキルを過信しない
上記全てがオープン・ウォーター・ダイバーコースで学ぶ当たり前の事なのですが、忘れがちな点でもあります。
経験を積んだきたダイバーの人達は、レスキュー・ダイバー・コースに参加する方が多いです。
それは、レスキュー・ダイバー・コースで学ぶセルフレスキュー能力を高める準備や、イザと言う時にバディを助けられる知識とスキル、心理面でもサポートできる余裕を身に付ける為でもあります。自信もつき仲間から頼られるダイバーですね。
オペレーター側は
- メディカルチェック・フォームをきっちり確認する
- 経験本数だけで、ダイバーのスキルを判断しない
- 海のコンディションに応じ、引率者の人数を増やす
2022年もまた「安全にダイビングを楽しめるよう」自分自身ダイバーとしての行動を振り返ってみるのも良いですね。