謎多き海の優しい巨人「マンタ」について知ろう!

マンタ

ダイバーから絶大の人気を誇る「マンタ」

バリ島ヌサペニダのマンタポイントでは年中マンタが見れます。
沢山のマンタが列なってやって来る姿は、迫力満点。

バリ島ヌサペニダ、マンタトレイン

一気にマンタの世界に引き込まれます。

謎多き海の優しい巨人「マンタ」の研究は世界中で進められいます。

ここでは、マンタの基本知識、繁殖行動や知能レベルなど興味深い研究データをまとめてます。

目次

マンタとエイの違い

マンタはエイの仲間。

エイには英語でスティングレイと呼ばれるグループがあります。

マンタもステインングレイも翼のような大きな胸ビレがあり、一見似たようにみえます。
ただ、この2つは異なる科に属し、異なる特徴があります。

  • マンタは、トビエイ目トビエイ亜目イトマキエイ科
  • スティングレイは、トビエイ目トビエイ亜目に属すエイ
    代表的なのがアカエイ、ヤッコエイ、マダラトビエイなど)
アカエイの仲間、マンタとエイの違い
アカエイの仲間
トビエイ目トビエイ亜目アカエイ科
ヤッコエイ,マンタとエイの違い
ヤッコエイ
トビエイ目トビエイ亜目アカエイ科
マダラトビエイ,マンタとエイの違い
マダラトビエイ
トビエイ目トビエイ亜目トビエイ科
マンタとエイの違い
マンタとエイの違い

マンタの種類|実はマンタは2種類いる

マンタの種類
マンタの種類

何十年もの間、科学者たちはマンタは 1 種しかないと考えていました。

今から13年前の2009年、研究者はマンタには2つの異なる種があることを発見。

2017年の遺伝子検査(DNA)では、この2種類のマンタはイトマキエイ(Devil ray) に属することが明らかになりました。
(以前はマンタ属とイトマキエイ属に分かれていました)

オニイトマキエイ
通称ジャイアント・マンタ

バリ島で見られるのは
主にナンヨウマンタ

2種類のマンタを比べてみよう

  • オニイトマキエイ:学名 Mobula birostris:英名 Giant oceanic manta ray 
  • ナンヨウマンタ:学名 Mobula alfredi : 英名 Reef manta ray

この2つの種には、いくつかの形態学的および行動上の違いがあります。
最も明白な違いは、体の大きさ生息地と言われてます。

ただ、マンタの中には非常によく似たものや、メラニズムにより体全体が黒くなったブラックマンタという個体もいます。
ブラックマンタ|マンタが黒くなる理由とその謎を解く

2種類のマンタ、オニイトマキエイとナンヨウマンタの違いと見分け方
2種類のマンタの違い

オニイトマキエイ、通称ジャイアント・マンタは世界最大のエイの仲間。

成長すると全長6mを超える大きさになり、サンゴ礁から離れた外洋に生息します。

ナンヨウマンタは沿岸生で、オニイトマキエイより小さいく最大でも5~6m。

どにちも熱帯及び亜熱帯地域全体に広く生息。

彼らは体に付いた寄生虫を駆除するため、クリーニング・ステーションにやってきます。

ダイバーがマンタを見ることが出来るのは、彼らがクリーニング・ステーションにやってくる時。

オニイトマキエイとナンヨウマンタの見分け方

見分け方のポイントは以下の3点

  • 背中の白い斑紋
  • 口の周り
  • 第5鰓孔(腹側にある黒い斑紋)

バリ島で見られるナンヨウマンタ

バリ島で見れるナンヨウマンタ、背中部分にある白い斑紋
マンタの見分け方
  • ナンヨウマンタの背中は黒で腹側は白(例外:メラニズムのブラックマンタ)
  • 背中に八の字にカーブした白い斑紋がある。
  • 口の周りが白い。
  • 第5鰓孔(えあらな)に黒い斑紋がない。
  • 腹側にダルメシアンのような黒い点がある

オニイトマキエイ(通称:ジャイアント・マンタ)

  • 背中に白い斑紋が口に沿って平行で直線的にある。
  • 口の周り黒い部分が多い。
  • 腹側の第5鰓孔に接して黒い斑紋がある。
ジャイアントマンタ
オニイトマキエイ(ジャイアントマンタ)

マンタが住む場所|クリーニングステーションってなに?

クリーニング ステーションとは、魚が体、口、鰓に存在する寄生虫を掃除するために集まる場所です。

ナンヨウマンタは主にインド太平洋地域の海岸線に沿って生息してます。
彼らは体についた寄生虫をお掃除される目的でクリーニング・ステーションにやってきます。

交尾の始まり、オスがメスを追いかける「マンタトレイン」もクリーニング・ステーションで見られます。

多くのマンタは、同じクリーニング・ステーションに何度も戻ってきます

ホンソメワケベラなど(海のお掃除屋さん)が寄生虫を食べている間、マンタはサンゴ根の岩の上をゆっくりと泳ぎます。
マンタとホンソメワケベラは一種の共生関係を形成しています。

オニイトマキエイは世界中の主要な海を泳ぎまわります。
彼らクリーニングステーションに行く頻度はナンヨウマンタよりはるかに少ないようです。

マンタは何を食べるの?

マンタの好物は動物プランクトンです。
具体的には、カイアシ類、アミ(Mysid shrimp), カニの幼虫、エビ、オキアミ、軟体動物の幼虫や魚の卵。

どれくらいのプランクトンを食べるの?

マンタは週に体重の約12%~13%のプランクトンを食べます。

体重約450キロのマンタは週に54キロのプランクトンを食べる計算になりますね。

マンタの餌の見つけ方と食べ方

マンタはどのように獲物を見つけるの?

マンタは視覚と嗅覚を使って獲物を見つけます。

マンタは大量の動物プランクトンを食べますが、食べ方に特徴があります。

マンタは下あごに歯があるにも関わらず、歯を使いません。

大きな口を開け、海水ごと飲み込み鰓を使ってろ過するように餌を取ります

口から入った不要な海水は、腹側にある鰓孔(えらあな)から排出。

濾過摂食(ろかせっしょく)
という方法でエサを食べるんだね。
ジンベエザメと同じだ!

そう!
違いは、マンタは泳ぎながら食べるんだよ。

なぜ、マンタは深海まで潜水するのか?

2020年3月18日、Plos Oneに発表されたニューカレドニア大学の研究結果は驚くものでした。

ナンヨウマンタが前例のない深海まで、より頻繁に潜水行動を示したんです。

Lassauce氏とチーム、9つのPSATタグ(衛星タグ)を使用してナンヨウマンタの行動を調査。

結果、タグ付けされて全ての個体が深度300mを超える潜水をしました。
中には、最大672mの潜水をした個体もいました。

最も深い潜水のほとんどが夜間に行われました。

なぜマンタは寒い深海まで潜水するの?

Lassauce氏いわく、表層水に存在する動物プランクトンの量は、ナンヨウマンタを維持するには不十分である可能性があると仮説してます

ナンヨウマンタはエサを求め、深海まで潜水していくんだね。

マンタは眠らない?

マンタは眠らないって言いますが、正式には「眠れない」んですね。

マンタは回遊性魚類

口を開けて泳ぎ、鰓(エラ)を通過する海水に溶け込んだ酸素を常に取り入れながら呼吸をしてます。
食事する時も泳ぎまわってます。

ラムジュート換水法(Ram ventilation)だね

泳ぎを止めると酸欠状態で窒息死してしまいます。

マンタの繁殖行動

マンタの繁殖過程については、不明な点が多いです。
分かっているのは、マンタの繁殖速度が遅いこと

National Geographicの記事によると、メスのマンタが性成熟に達するには、通常8~10年かかります。
マンタは数年に一回、それも通常一匹しか子供を産みません。

マンタの寿命は40年~50年と言われてます。

オスとメスの見分け方

マンタ、オスとメスの見分け方
マンタ、メスとオスの見分け方

尾の付け根にクラスパーと呼ばれる2本の生殖器があるのがオスで、ないのがメスです。

マンタの交配プロセス: マンタはどのように求愛するの?

交尾の始まりはを、「マンタトレイン」と呼びます。

1 匹のメスのマンタが前を泳ぎ、その後に数匹~数十匹のオスのマンタが続きます。

(※画像をクリックするとYoutubeの動画が見られます)

マンタトレイン
マンタトレイン

メスのマンタは交尾の準備が整うと、フェロモンを放出。

交尾しようとするとき、オスはメスの上を泳ぎ、翼端を持ってメスが動かないようにします。

マンタの求愛
マンタの求愛

次に、クラスパー(clasper)と呼ぶ生殖器 の 1 つをクロアカ (cloaca) と呼ぶメスの総排出膣に挿入し、卵子と受精します。

クラスパーは腹鰭(はらびれ)の延長部にあり、オスのマンタがメスに精子を届けるための手段です。

オスには2つのクラスパーがありますが、受精が試みられるときに使用されるのは1つだけです。

※ちなみに、「どのようにメスのマンタがパートナーを決めるのか」を示す決定的な研究はありません。

マンタの妊娠と出産

National Geographicの記事によると、メスのマンタが性成熟に達するには、通常8~10年かかります。
求愛プロセスは通常、この年齢の頃に行われます。

マンタは数年ごとに 1 回、通常は 1 匹(場合によっては 2 匹)の子を産む傾向があります。
妊娠期間は約12~13か月。

(※マンタの出産は、2年に1回という説もあります。IUCNのレポートではナンヨウマンタは4~5年に一回)

妊娠中のマンタ、背中まで膨らんでいる
妊娠中のマンタ、背中まで膨らんでいる

マンタの妊娠の最初兆候は、人間の妊娠と非常によく似ており、腹部の拡大から始まります。

しかし、人間とは異なり、マンタには胎盤やへその緒がありません
つまり、胎児は別の方法で栄養を摂取しなければなりません。

胎児はどのよに栄養を得てるの?

胎児のマンタを超音波で見ると、赤ちゃんマンタは子宮内でリズミカルに呼吸できることが明らかになりました。

2009年6月、沖縄にある美ら海水族館は2回目の出産に成功。
妊娠中、水族館の研究者は、超音波検査を行い子宮内にいる胎児を調べました。

結果、胎児のマンタが口を繰り返し開いたり閉じたりすることを発見
マンタの赤ちゃんは子宮液を吸収して栄養源にしています。

※沖縄美ら水族館:マンタの子宮内胎仔の長期モニタリングに成功!

マンタは卵胎生(たいらんせい)です。
母親の体内で卵を孵化(ふか)した後に体外へ産みだします。

マンタの妊娠期間は約 13 か月。
卵ではなく赤ちゃんを産みます

生まれたばかりの赤ちゃんは、大人の小さいバージョン。
ほぼ正確なレプリカ。

親が世話をしなくてもすぐに生き延びることができます。

生まれたときの赤ちゃんの身長は、1.30 メートルから 1.50 メートルです。

その後、1年で2倍になります。

また、マンタは5 年ごとに繁殖し、平均寿命は40~ 50 年であると推定されています。

マンタの知能レベル

マンタの脳は握りこぶしほどの大きさです。

人間や他の哺乳類と比較するとそれほど大きくないように思えるかもしれませんが、マンタはすべての魚の中で最大の脳と体の比率を持っています。

体の大きさと脳の大きさは比例するの?

マンタは、ジンベエザメマンタと似たようなライフスタイルで捕食方法も似ています。
ジンベエザメはマンタの10倍の大きさですが、脳のサイズはマンタの1/3です。

マンタの研究で世界的に有名なDr. Csilla Ariは、マンタの能がこれほど大きく発達したのには理由ある。
それが何であるかに興味をもちました。

マンタは全てのエイの中で最大の前脳(学習、記憶、感覚統合を担う考えられている脳の一部)を持っています。

Dr. Csilla Ariはマンタの感覚、認知力、社会的行動をテストする方法を模索。

ただ、野生で視覚能力と認知能力をテストすることは技術的にほぼ不可能。

動物の自己認識能力を図るテストで信頼性の高い、ミラー自己認識(MSR)テストを試みました。
鏡を見たマンタが自分の姿にどう反応するかによって、マンタが自己認識できるか調べるんです。

自分を認識する」ことは、動物の中では非常にまれな能力。

アジアゾウ、バンドウイルカ、チンパンジーやオラウータンなど、今ままでこのテストに合格したのは
脳の大きな種だけで、魚類ではいませんでした。

鏡を見たこともないマンタ。

鏡の中のもうひとりの自分をみてどう反応するのでしょうか?

マンタは自己認識できるのか ?

2016 年にDr.Csilla Ariは「オニイトマキエイの鏡を使った実験」を行い、マンタは魚類で唯一自己認識能力があると確信しました。

彼女は、2匹のオニイトマキエイを水槽の内部に①鏡がある場合と、②鏡が無い場合で長期間にわたり撮影。

通常、自己認識能力のない動物は、鏡に映った自分の姿に対して、他の動物にとるような社会的・性的・攻撃的な行動をとるようです。

  • 鏡のある水槽にいたマンタは、鏡に映った自分をチェクするように、ヒレを動かしたり、鏡の前で円を描きながら泳いだりしました。
  • 別の科学者は、マンタが鏡の前で泡を吹き飛ばした画像を撮ってます。
  • これらの動きの頻度は、水槽内に鏡がある時に多く見られました。
  • 自己認識能力のない動物がとるような、社会的相互作用の兆候を示すことはありませんでした。

2014年、Dr.CsillaAriはマンタの色の変化について研究発表しています。

それによると、マンタは食後や別の個体に出会うと背側表面の白い斑紋、お腹の斑点や頭部などで色の変化が起こります

  • 鏡のある水槽にいたオニイトマキエイは、鏡で自分の姿を見ても色の変化が起こりませんでした。
    これは、オニイトマキエイが自己認識しているとことの判断材料となります。

Dr.Csilla Ariは以上の点から、オニイトマキエイは自己認識能力を強く示唆していると結論付けています。

懐疑的な意見もあります。

ミラー自己認識(MSR)テストの開発者 Gordon G. Gallup Jr.は、鏡の前での異常な動きは、単に好奇心や探索行動の兆候だったかもしれないとコメントしてます。

また、このテスト方法で説得力のある再現可能な証拠を残せているのは人間、チンパンジー、オラウータン(一部の大型類人猿)のみともコメントしてます。

参考:

まとめ|マンタを救おう

オニイトマキエイとナンヨウマンタは、国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストのカタゴリーの中でも特に絶滅の危険度が高い分類に認定されています。

  • オニイトマキエイは2絶滅危惧種(endangered)
  • ナンヨウマンタは危急種(vulnerable)

IUCNの2020年の報告書によると、オニイトマキエイはかこ3世代(87年)にわたって50~79%の個体数が減少しており、今のままでは、次の3世代にわたって更に減少する疑いがあると述べています。

大きなマンタを絶滅へと追い込んでいるのは人間か?

2014年9月にマンタはワシントン条約(CITES)国際取引規制に加わりました。

ワシントン条約が実施された直後、インドネシア政府はマンタ保護の厳しい規制を作りました。

「生きているマンタの方がはるかに経済効果が高い」と考えた政府は、世界最大のマンタ漁業国から世界トップのマンタ観光地へと舵取りを変えました。

インドネシアは「世界最大のマンタ保護区を宣言

にもかかわらず、

コモド国立公園で行われた調査結果を見ると、依然として違法な漁業がインドネシアとその周辺で行われています。

地元漁師にとってマンタは高額な収入源。
意図せずに捕まえてしまったマンタを海に返す習慣などありません。
政府は人々の意識を変えることが始めています。

インドネシアは、経済発展とともに「プラスチック・ゴミ」が新たな社会問題となってます。

バリ島でも、雨季になると大量のプラスチック・ゴミが海に流れ込みます

海に流れ込んだプラスチックはマイクロプラスチックと呼ばれる小さな破片になり、
マンタはプランクトンと間違えプラスチックの破片を食べてしまいます。

最後は地球温暖化問題です。

地球温暖化により、マンタの食料である動物プランクトンの量は減ってます。
マンタはエサを求め、深海まで潜水しなければなりません。

マンタは成長速度が遅い生き物です。
数年に1回しか子供を産みません。
子孫が少ないということは、個体が乱獲から回復するのに長い時間がかかる可能性があります

知的で、フレンドリーなマンタは人間に危害を与えません。

マンタを救えるのも、絶滅の危機へと追い込むのも我々人間ではないでしょうか?

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