スパインチークアネモネフィッシュ:実はクマノミ属だった!

クマノミの中でも唯一無二の存在感があるスパインチークアネモネフィッシュとは?
赤銅色の体に白いライン、そして他のクマノミには見られない「頬にあるトゲ」。
この特徴的な姿は、特に成熟したメスに顕著で、水中でもひときわ目を引く存在です。
この魚は、1916年から2021年までの実に105年間「他のクマノミとは違う属(プレムナス属/Premnas)として扱われてきました。
ところが、2021年に行われたDNA解析によって「実は他のクマノミたちと同じクマノミ属の一員である」ことが学術的に確認されたのです。
ここでは、この分類変更の背景や意味、そして変わらぬ魅力について解説します。
プレムナス属(Premnas) に分類されてた理由

和名:スパインチークアネモネフィッシュ
英名:Maroon clcownfish, Spine-cheeked anemonefish
スパインチークアネモネフィッシュは、かつてその外見的特徴から、「プレムナス属/Premnas」という独立した属に分類されていました。
その主な理由は、他のクマノミには見られない「頬のトゲ(スパイン)」が特徴的だったからです。
「見た目が違う=別の属」という古典的な分類方法によって、スパインチークアネモネフィッシュは
他のクマノミたちとは別扱いにされ、「ちょっと特別な存在」とされてきました。
DNA解析が明かした、「実はクマノミ属(Amphiprion)」だった真実

2014年~2016年頃にかけて行われたDNA解析(分子系統解析)により、「プレムナス属/Premnasは、実は遺伝的に
クマノミ属/Amphiprionの一部に含まれる」という事実が明らかになりました。
この段階で、FishBaseなどのデータベースや一部の研究者の間では、スパインチークアネモネフィッシュの学名を「Premnas biaculeatus」から「Amphiprion biaculeatus」へと変更する動きが始まっていました。
そして2021年、Bruno Frederich博士らによるスズメダイ科全体を対象とした大規模な系統解析の研究が発表され、
プレムナス属/Premnasは正式に無効とされ、クマノミ属/Amphiprionに統合されました。
1802年に命名されていたクマノミ属(Amphiprion)の名前が優先され、それより後に提唱されたプレムナス属(Premnas)は、ジュニアシノニム/Junior synonym(あとから提案されたため使われなくなった名前)として無効とされました。
この研究により、「スパインチークアネモネフィッシュはクマノミ属の一員である」という分類が、正式かつ学術的に確認されたのです。
スパインチークアネモネフィッシュ | 旧 | 新 |
---|---|---|
属(Genus) | プレムナス属/ Premnas | クマノミ属/Amphiprion |
学名 | Premnas biaculeatus | Amphiprion biaculeatus |
スパインチークは、見た目おそ他のクマノミと異なりますが、遺伝的にはまさに「仲間」だったということが、化学の力で裏付けされたのです。
スパインチークアネモネフィッシュの特別な存在感は変わらない

属の名前が変わったといって、スパンチークアネモネフィッシュの魅力が損なわれることはありません。
顎にあるトゲ、深みのある赤銅色の体色、そして堂々としたたたずまいは健全です。
分類上は「ふつうのクマノミ属」になっても、水中で放つオーラは唯一無二。
化学が教えてくれるのは「見た目で判断してはいけない」ということかもしれませんね。
スパインチークアネモネフィッシュは、外見でも内面(DNA)でも、クマノミの魅力を体現する特別な存在なのです。
参考資料:
- RIP Premnas:1916-2021
https://www.coralmagazine.com/2021/05/15/rip-premnas-1816-2021/?utm_source=chatgpt.com - Research Gate
https://www.researchgate.net/figure/Molecular-phylogenetic-tree-of-eight-anemonefishes-Amphiprioninae-and-Abudefduf_fig10_275258414
