ダイビングで苦手な「耳抜き」リバースブロック編

ダイビングの悩みで多いのが「耳抜き」
特に初心者ダイバーにとっては、スムーズに耳抜きができるかどうかが快適なダイビングの鍵になります。

前回のブログでは「潜降中の耳抜き」について深堀し、特に「5mまでが勝負」というポイントに焦点を当てました。潜降時の耳抜きに苦労するダイバーは多いですが、実は浮上時にも耳のトラブルが発生することがあるのをご存じでしょうか?

今回は、浮上中に起こる耳の障害「リバースブロック(逆圧外傷)」について詳しく解説し、さらに私自身が実際に経験した「苦い思い出」もご紹介します。

耳抜きが苦手な方、過去に耳の違和感を覚えたことがある方、また「リバースブロックって何?」という方にも役立つ内容になってます。

目次

リバースブロックとは、浮上中に起こる耳の障害

ダイビング、耳の構造

リバースブロックとは、浮上中に圧平衡がうまくできずに起こる耳のトラブルのことです。

通常、ダイビングで浮上する際は耳抜きをする必要はありません
なぜなら、中耳腔(鼓膜の内側)で膨張した空気は耳管を通って自然に外へ抜け、圧平衡が保たれるからです。

しかし、何らかの理由で耳管が開かず、空気が抜けない場合、膨張した空気が中耳腔に溜まり、鼓膜を圧迫します。
これにより強い痛みや不快感が発生します。この現象が「リバースブロック」です。

この状態になると、わずかに浮上するだけでも耳が痛くなり、思うように浮上できなくなることも…。
無理に浮上しようとすると、激しい痛みや耳の障害(最悪の場合、鼓膜の損傷など)につながる可能性があるため、
落ち着いて適切に対処することが大切です

浮上できないなて、潜降できないより怖~い

「リバースブロック」を起こす原因は?

問題なくダイビングをしてたダイバーでも、以下のような体調やコンディションの影響でリバースブロックを引き起こすことがあります。

風気味だったり、鼻の調子が悪い

→ 鼻や耳管の粘膜が腫れていると、耳管が開きにくくなり、空気の通りが悪くなります。

寝不足や疲労

→ 体調が万全でないと、耳管の働きも鈍くなり、正常な圧平衡ができなくなることがあります。

体調が不良 
無理やり耳抜きをして潜降した

→ 潜降時に強引に耳抜きをすると、耳管にダメージを与えたり、耳管が過度に閉じてしまうことがあります。

充血除去薬(鼻詰まりを解消する薬)を使用した場合

→ 陸上で鼻詰まりを改善するために充血除去薬を服用して潜った場合、水中で薬の効果が薄れると耳管が詰まり、リバースブロックを引き起こしやすくなります。

リバースブロックは浅い水深で発生しやすい

気圧の変化は浅い水深ほど大きくなるため、特に水深約5m前後でリバースブロックが発生するケースが多いです。
この深度で急浮上しようとすると強い痛みが伴うため、落ち着いて対処することが重要です。

バリ島ダイビング、耳抜き

リバースブロックになったらどうしたらいいの?

リバース・ブロックが起こった場合、無理に浮上しようとすると痛みが悪化し、耳にダメージを与える可能性があるため、冷静に対処することが大切です。

1.まずは少し深度を下げる
  • リバースブロックは、中耳に閉じ込められた空気が外へ抜けないことで発生します。
  • なので、潜降時に耳抜きができない時とは逆のアプローチをとります。
  • 一度 1メートルほど深く潜り直してみましょう
  • こうすることで、耳管が開きやすくなり、閉じ込められた空気が抜けやすくなります。
2.それでもダメなら、さらに深度を下げる
  • もし 1メートル程度では解消しない場合圧平衡ができる深度まで少しずつ下げてみてください。
  • 深度を下げることで、中耳の膨張した空気が少し圧縮され、耳管が開きやすくなることがあります。
3.ゆっくり、慎重に浮上する
  • 圧平衡が取れて痛みが和らいだら、焦らず、ゆっくりと浮上しましょう。
  • 浮上のスピードが速いと再びリバースブロックが起こる可能性があるため、少しずつ様子を見ながら慎重に浮上することがポイントです。

無理に浮上しないことが、耳を守る一番の対策です!

リバースブロック:私の苦い経験談

「このまま浮上できなかったらどうしよう?」
水中で涙を流すほどの恐怖—それば、私のリバースブロック体験です。

忘れもしない、20年以上前のこと。
当時の経験本数は100本ほどで、アドバンスダイバーになりたてでした。

友人と一緒にインドネシア・マナドのブナケン島へ1週間のダイビング旅行へ。
毎日3本+時々ナイトダイブ。連日深場に潜り、夜は宴会。
ツアーも後半に入り、疲れも溜まっていたのは明らかでした。

そして迎えた最終日前日。3本目のダイビングで悲劇が起こったのです—。

突然の激痛、水深5mで動けない

潜降中、少しだけ耳に違和感を感じましたが、気にせずそのまま続行。
過去に耳抜きで困ったことはなかったので、油断していました。

普通にダイビングを楽しみ、いざ浮上。
しかし、水深5m付近で突然、耳が激痛が走ったのです。
「え?何これ—?」
初めての経験に動揺。
少し浮上しようとすると、さらに強烈な痛みが!
その場から一歩も動けませんでした。

頭によぎったのは、最悪のシナリオ—
まさか、これがリバースブロック?

ガイドの冷静な対応と、浮上への道

幸いすぐそばにガイドとバディがいました。
「耳がおかしい!」と必死に伝えると、ガイドがすぐに対応。
少し深度を下げて様子を見ることに。

しかし、1メートル下げても圧平衡できない。
さらに深度を下げる……

残圧60

さまざまな不安が頭をよぎる——

  • どこまで深く潜ればいいのか?
  • どれくらい水中にいなければならないのか?
  • エア(空気)は足りるのか?
  • このまま浮上できなかったらどうしよう?

私はガイドの腕をしっかり掴み、
マスク越しにこぼれる涙をこらえました。

ガイドは冷静に、別のダイブマスターに 予備のタンクを水中へ持ってくるよう指示。
やがて耳の痛みが和らぎ始め、ゆっくり浮上開始。

本当にゆっくり、ゆっくりと——-。

たまに耳が痛み、そのたびに涙が出そうになる。
それでも、ついに水面へ到達。

水面に出た瞬間、嬉しさと安堵で「大泣き」しました。

リバースブロックを防ぐために

しばらく陸上で休むと、耳は元に戻りました。
ですが、翌日の最終ダイブはすべてキャンセル。

今振り返れば、私のケースはまだ軽傷だった と思います。
浮上中にリバースブロックになると、耳の痛みだけでなく、吐き気、めまいを引き起こすこともあります。

普通リバースロックは圧平衡ができた段階で改善すると言われてますが、もう二度と経験したくないです

この日以来、ダイビングツアー中は次の3つを徹底するようになりました。

  • 無理をしない 
  • 十分な睡眠をとる
  • お酒を控える

体調管理を怠らず、正しく潜降すれば、ほとんどの人はリバースブロックを経験することはありません
安全にダイビングを楽しむ為に、ダイビングは過信せず、無理せず、バディの近くで行いましょう!
この経験が、少しでも誰かの役に立てばと思います。

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